プロローグ『薬棚のむこうに広がる世界』

漢方小説

森のはずれ、小さな薬棚の奥に――

不思議な世界が広がっていた。

木の実のような薬、枯れ葉のような薬、石ころみたいな薬。

それらが組み合わさると、なぜか心も身体もふっと軽くなる。

漢方というのは、なんだか“魔法”のようで、“理屈”のようで、

そしてとても、人間くさいものだった。

主人公はカワウソの男の子。

名前は「こつめ」。

ちょっと体が弱くて、風邪をひきがちで、

でも、目の奥にキラリと好奇心の光を宿していた。

ある日、運命のように出会った

ひとりの“漢方のおばあちゃん”。

その出会いから、こつめの人生は少しずつ変わり始める。

漢方って何?

体質って?

気・血・水ってどういうこと?

くすりと笑って、じんわり泣けて、

気がつけば心まで整っているような――

そんな「こつめ先生になるまでの物語」。

これは、小さなカワウソが“漢方家”になるまでの、

ちょっぴり不器用で、あったかい旅のはじまり。

連続漢方小説『こつめ先生がゆく』

――ここに、そっと開幕です。