連続漢方小説『こつめ先生がゆく』

第6話『補中益気湯ってどんな味?』

「今日はこれ、煎じてみぃ。」 おばあちゃんが差し出したのは、茶色い紙袋。 中には何種類もの草や根っこ、実のようなものがぎっしり入っていた。 「これが…“ほちゅうえっきとう”ってやつか。」 火鉢の上で煎じ始めると、 湯気と […]

第5話『おまえはどんな“気”をしてる?』

春のはじまり。 朝はまだひんやりするけれど、昼になるとぽかぽかと陽射しが差し込む。 だけど、こつめ少年の表情は、いまひとつ冴えない。 「……なんか、しんどいんや。」 熱もない。咳も出ない。風邪じゃなさそう。 でも、朝から […]

第4話『あんたの体質、冷えやな』

冬の朝。 こつめ少年はマフラーに顔をうずめ、指先をこすりながら薬棚の隅で丸くなっていた。 「さぶ…さぶすぎる……」 火鉢に手を伸ばしても、足の先からはじんわり冷えが上がってくる。 湯気の立つ薬湯がそばにあるのに、いまいち […]

第3話『湯気のむこうの決意』

「さあ今日は、煎じるとこまでやってみぃ。」 おばあちゃんが差し出したのは、土瓶と小さな火鉢。 こつめ少年の目がぱちくりと大きくなる。 「ボクが!?」 「自分の手でやってこそ、ほんまの“漢方好き”になるんやで。」 ⸻ 緊張 […]

第2話『漢方の棚は宝箱』

「これ、全部くすりなん…?」 風邪が治って元気を取り戻したこつめ少年は、 おばあちゃんの店の奥にある棚をじーっと見つめていました。 色とりどりの瓶や紙袋、乾いた葉っぱに見えるものまで並ぶその棚は、 こつめにとってまるで* […]

第1話『カゼと、おばあちゃんと、あの薬』

こつめ先生が漢方と出会う運命の1日・・・ こつめ先生がまだ“先生”ではなかった頃。 名前もただの「こつめ」。 どこにでもいる、風邪ばっかりひいてる小さなカワウソでした。 「また熱かいな…あんた、ほんま身体よわっちいなぁ。 […]

プロローグ『薬棚のむこうに広がる世界』

森のはずれ、小さな薬棚の奥に―― 不思議な世界が広がっていた。 木の実のような薬、枯れ葉のような薬、石ころみたいな薬。 それらが組み合わさると、なぜか心も身体もふっと軽くなる。 漢方というのは、なんだか“魔法”のようで、 […]