第1話『カゼと、おばあちゃんと、あの薬』

漢方小説

こつめ先生が漢方と出会う運命の1日・・・

こつめ先生がまだ“先生”ではなかった頃。

名前もただの「こつめ」。

どこにでもいる、風邪ばっかりひいてる小さなカワウソでした。

「また熱かいな…あんた、ほんま身体よわっちいなぁ。」

そう言いながら、優しく背中をさすってくれたのは、森のはずれで漢方を扱うおばあちゃん。

年季の入った木の棚には、土瓶やら茶色い瓶やら、見たことないものがずらりと並んでいました。

「これ、飲んでみぃ。苦いけど、よう効くよ。」

そう言って手渡されたのは、なんとも言えん色の…あったかいお茶のような液体。

「……にっ、にがっ!!」

「ふふ、そうやろ。でも、カラダの奥から温もってくるやろ?」

数時間後。

あれだけぐったりしてたのに、身体がスーッと軽くなって、こつめは思わずつぶやきました。

「なんやこれ……魔法みたいや。」

おばあちゃんは、笑って首をふります。

「魔法とちゃう。**“漢方”いうんや。自然の力で、カラダと話し合う薬やで。」

その言葉が、ちいさなこつめの胸に、じんわり残ったのでした。

【つづく】

次回予告タイトル:

第2話『漢方の棚は宝箱』

こつめ少年、おばあちゃんの店で初めて「葛根湯」と出会う!