「……かっこんとう。ほちゅう…えっきとう。あれ? なんやったっけ?」
こつめ少年は、棚の前で首をかしげていた。
漢方の袋には、漢字ばかりの難しそうな名前がずらり。
どれがどれやら、さっぱりわからなくなってきた。
「おばあちゃん、これとこれ、何がちゃうん?」
こつめが手にしていたのは、**葛根湯(かっこんとう)と補中益気湯(ほちゅうえっきとう)**のパック。
「漢字は似てへんけど、どっちも茶色いし、煎じたら似た匂いすんねん。」
おばあちゃんはくすっと笑って、こう答えた。
「似てるようで、全然ちゃうんやで。」
「葛根湯は、風邪のひきはじめ。
身体の外に“寒さ”を追い出す薬。」
「ほな、補中益気湯は?」
「こっちは、内側から“火力”を起こす薬。
風邪は“外邪”、気虚は“内の不足”や。」
「なるほどなぁ……外から来たのと、中が弱ってるのと、違うんか。」
「そう。見た目は似てても、“効かせたい場所”がちゃうんよ。」
こつめ少年は、しばらく黙って袋の文字を見つめたあと、つぶやいた。
「ボク、名前覚えるの、苦手やけど…
この薬らの“性格”は、なんか覚えられそうな気がする。」
薬の名前がむずかしいのは、
単に漢字が多いからじゃない。
それぞれの薬が、“どんな想いで働くか”を知ること。
それが、こつめ少年の新しい学びとなっていった。
【つづく】
▶ 次回予告タイトル:
第8話『あんたの“血”、ちゃんとめぐってる?』
こつめ少年、次なるキーワード「瘀血(おけつ)」と出会う!