第7話『薬の名前って、むずかしい?』

漢方小説

「……かっこんとう。ほちゅう…えっきとう。あれ? なんやったっけ?」

こつめ少年は、棚の前で首をかしげていた。

漢方の袋には、漢字ばかりの難しそうな名前がずらり。

どれがどれやら、さっぱりわからなくなってきた。

「おばあちゃん、これとこれ、何がちゃうん?」

こつめが手にしていたのは、**葛根湯(かっこんとう)と補中益気湯(ほちゅうえっきとう)**のパック。

「漢字は似てへんけど、どっちも茶色いし、煎じたら似た匂いすんねん。」

おばあちゃんはくすっと笑って、こう答えた。

「似てるようで、全然ちゃうんやで。」

「葛根湯は、風邪のひきはじめ。

身体の外に“寒さ”を追い出す薬。」

「ほな、補中益気湯は?」

「こっちは、内側から“火力”を起こす薬。

風邪は“外邪”、気虚は“内の不足”や。」

「なるほどなぁ……外から来たのと、中が弱ってるのと、違うんか。」

「そう。見た目は似てても、“効かせたい場所”がちゃうんよ。」

こつめ少年は、しばらく黙って袋の文字を見つめたあと、つぶやいた。

「ボク、名前覚えるの、苦手やけど…

 この薬らの“性格”は、なんか覚えられそうな気がする。」

薬の名前がむずかしいのは、

単に漢字が多いからじゃない。

それぞれの薬が、“どんな想いで働くか”を知ること。

それが、こつめ少年の新しい学びとなっていった。

【つづく】

次回予告タイトル:

第8話『あんたの“血”、ちゃんとめぐってる?』

こつめ少年、次なるキーワード「瘀血(おけつ)」と出会う!