漢方

漢方小説

第12話『道に迷う日、心に迷う日』

大学の講義室。周りの席からは「国家試験」「内定」「研修」…そんな単語ばかりが飛び交っていた。みんな、もう“どこで何をするか”を決めているようやった。ぼくはノートの端に、また薬草の名前を書いていた。シャクヤク、カンゾウ、ケイヒ…。授業内容とは...
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第8話『あんたの“血”、ちゃんとめぐってる?』

その日は雨上がりの午後やった。湿った風が流れこむ店の奥で、こつめ少年は棚の整理をしていた。「おばあちゃん、お湯わいたでー」返事がない。⸻奥の間に目を向けると、おばあちゃんが椅子に腰かけ、胸を押さえて静かに目を閉じていた。「……だいじょうぶ?...
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第7話『薬の名前って、むずかしい?』

「……かっこんとう。ほちゅう…えっきとう。あれ? なんやったっけ?」こつめ少年は、棚の前で首をかしげていた。漢方の袋には、漢字ばかりの難しそうな名前がずらり。どれがどれやら、さっぱりわからなくなってきた。「おばあちゃん、これとこれ、何がちゃ...