漢方ストーリー

漢方小説

第7話『薬の名前って、むずかしい?』

「……かっこんとう。ほちゅう…えっきとう。あれ? なんやったっけ?」こつめ少年は、棚の前で首をかしげていた。漢方の袋には、漢字ばかりの難しそうな名前がずらり。どれがどれやら、さっぱりわからなくなってきた。「おばあちゃん、これとこれ、何がちゃ...
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第6話『補中益気湯ってどんな味?』

「今日はこれ、煎じてみぃ。」おばあちゃんが差し出したのは、茶色い紙袋。中には何種類もの草や根っこ、実のようなものがぎっしり入っていた。「これが…“ほちゅうえっきとう”ってやつか。」火鉢の上で煎じ始めると、湯気とともにふわっと、ほんのり甘くて...
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第5話『おまえはどんな“気”をしてる?』

春のはじまり。朝はまだひんやりするけれど、昼になるとぽかぽかと陽射しが差し込む。だけど、こつめ少年の表情は、いまひとつ冴えない。「……なんか、しんどいんや。」熱もない。咳も出ない。風邪じゃなさそう。でも、朝からぼーっとして、ご飯もあまり進ま...
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第4話『あんたの体質、冷えやな』

冬の朝。こつめ少年はマフラーに顔をうずめ、指先をこすりながら薬棚の隅で丸くなっていた。「さぶ…さぶすぎる……」火鉢に手を伸ばしても、足の先からはじんわり冷えが上がってくる。湯気の立つ薬湯がそばにあるのに、いまいち身体はあったまらない。それを...
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第3話『湯気のむこうの決意』

「さあ今日は、煎じるとこまでやってみぃ。」おばあちゃんが差し出したのは、土瓶と小さな火鉢。こつめ少年の目がぱちくりと大きくなる。「ボクが!?」「自分の手でやってこそ、ほんまの“漢方好き”になるんやで。」⸻緊張した面持ちで薬草を量り、水を入れ...
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第2話『漢方の棚は宝箱』

「これ、全部くすりなん…?」風邪が治って元気を取り戻したこつめ少年は、おばあちゃんの店の奥にある棚をじーっと見つめていました。色とりどりの瓶や紙袋、乾いた葉っぱに見えるものまで並ぶその棚は、こつめにとってまるで**“宝箱”**みたいに見えた...
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第1話『カゼと、おばあちゃんと、あの薬』

こつめ先生が漢方と出会う運命の1日・・・こつめ先生がまだ“先生”ではなかった頃。名前もただの「こつめ」。どこにでもいる、風邪ばっかりひいてる小さなカワウソでした。「また熱かいな…あんた、ほんま身体よわっちいなぁ。」そう言いながら、優しく背中...
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プロローグ『薬棚のむこうに広がる世界』

森のはずれ、小さな薬棚の奥に――不思議な世界が広がっていた。木の実のような薬、枯れ葉のような薬、石ころみたいな薬。それらが組み合わさると、なぜか心も身体もふっと軽くなる。漢方というのは、なんだか“魔法”のようで、“理屈”のようで、そしてとて...