補中益気湯

漢方小説

第16話『修行の日々 ―気虚の学び―』

京都での修行が始まったこつめ青年。師匠の穏やかな眼差しのもと、初めて出会った「気虚」の患者。補中益気湯の処方を通じて、“風船のような脈”が示す心と体の虚を学ぶ――。漢方家としての第一歩を描く第16話。
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第14話『数字の向こうに』

営業所に戻ると、机の上には報告書の山が待っていた。今日訪問した病院名、担当医、面談時間、そして――処方数。パソコンの画面には棒グラフが並び、赤い線が「目標」を示している。「ここを越えんと、評価はされへんぞ」先輩がコーヒーを片手に言う。「患者...
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第13話『初めての処方箋』

大学を卒業して、ぼくはある製薬メーカーに就職した。配属先は“病院まわり”を担当する営業、いわゆるMR。新しい肩書きにまだ慣れないまま、研修を終えて初めて現場に出る日が来た。「本日から病院まわりに出てもらうからな」先輩が分厚い資料を手渡してく...
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第7話『薬の名前って、むずかしい?』

「……かっこんとう。ほちゅう…えっきとう。あれ? なんやったっけ?」こつめ少年は、棚の前で首をかしげていた。漢方の袋には、漢字ばかりの難しそうな名前がずらり。どれがどれやら、さっぱりわからなくなってきた。「おばあちゃん、これとこれ、何がちゃ...
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第6話『補中益気湯ってどんな味?』

「今日はこれ、煎じてみぃ。」おばあちゃんが差し出したのは、茶色い紙袋。中には何種類もの草や根っこ、実のようなものがぎっしり入っていた。「これが…“ほちゅうえっきとう”ってやつか。」火鉢の上で煎じ始めると、湯気とともにふわっと、ほんのり甘くて...
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第5話『おまえはどんな“気”をしてる?』

春のはじまり。朝はまだひんやりするけれど、昼になるとぽかぽかと陽射しが差し込む。だけど、こつめ少年の表情は、いまひとつ冴えない。「……なんか、しんどいんや。」熱もない。咳も出ない。風邪じゃなさそう。でも、朝からぼーっとして、ご飯もあまり進ま...