漢方小説第10話『さよなら、おばあちゃん』 「こつめ、ちょっと来てくれるか?」そう言われて、ぼくは薬棚の整理を途中でやめた。いつもの声。いつもの調子。でも、何かが違った。縁側に、おばあちゃんが座っていた。畳に映る影が、いつもより細くて、頼りない。「こつめ。あんた、よう手ぇ動かすように... 2025.07.26漢方小説
漢方小説第8話『あんたの“血”、ちゃんとめぐってる?』 その日は雨上がりの午後やった。湿った風が流れこむ店の奥で、こつめ少年は棚の整理をしていた。「おばあちゃん、お湯わいたでー」返事がない。⸻奥の間に目を向けると、おばあちゃんが椅子に腰かけ、胸を押さえて静かに目を閉じていた。「……だいじょうぶ?... 2025.07.05漢方小説